キリスト教式が終わった後、新郎新婦の退場の際に、祝福の意味合いを込めて新郎新婦に参列者が米を振り掛ける。
なお、ホテルや結婚式場のチャペルでは、掃除をする手間などを考えて、チュールに包んだ米を使うことが多い。
【歴史・由来】
米は豊穣や繁栄を象徴するもの。それを新郎新婦に振り掛けることで、ふたりの幸せを願う。
時期的にちょうど皇族の結婚にあやかったものだったのかもしれない。
だが、その名はきっと“見る者を幸せにする”ために、祝福の意味を込めて名付けられたのだと思う。
※以下、ウマ娘「ライスシャワー」に関するあらゆる重大なネタバレを多々含みます。
◼ライスシャワーという存在
ライスシャワー。日本の競走馬である。
競馬史上でも珍しい、「勝ちを望まれなかった」馬。
無敗のまま3冠を手にしようとしたミホノブルボンに菊花賞にて黒星をつけ、今でこそ最強のステイヤーとの呼び声高いメジロマックイーンの天皇賞(春)3連覇を阻止。彼が勝利を収めた後、競馬場は異様な空気に包まれたと言う。きっとそれはブルボン、そしてマックイーンに「勝ってほしい」と──裏を返せば「ライスシャワーに負けてほしい」と──願った人々が少なからず居たからに違いない。
長期間のスランプ、そして天皇賞での復活。多くのファンからの投票により出馬した宝塚記念のレース中に遂げた死。
その壮絶な生涯はひとつのドラマのようでもあり、俯瞰してみれば美しさすら感じる。
悲劇の悪役(ヒール)。ヘビーステイヤー。レコードブレイカー。彼の二つ名は多く挙げられるが……。
「刺客」
全くもって、これ以上に相応しい呼び名はないと筆者は考える。
勝ち星が無いながらも人気を伸ばしたハルウララとは対極にある、不幸な競走馬。
あまりにも美しすぎた彼の生き様は美談にされた。一頭の馬の物語は美化され、変容し、本質すら変わりゆく。
これは死の当時にも「ライスシャワーブーム」として起こったことだ。
そして2021年春。今も起こっている。
しかし、だからこそ。美しすぎたからこそ。
一人のオタクに、ライスシャワーという存在を激烈に印象づけた。
大人気スマホアプリ、【ウマ娘プリティーダービー】。競走馬を擬人化した「ウマ娘」たちが走って歌って踊り、ファンを集める育成ゲーム。
その舞台に彼──否、彼女もいる。
ライスちゃん。
誕生日は3月5日、身長145cm。スリーサイズは上から75、51、76。小柄なのは原典のライスシャワー(馬)に準拠している。
ナイフを抜きつつ駆け出す姿はまさに「刺客」。青い薔薇の意匠も目に鮮やかで美しい。
みんなの幸せを願う。彼女の走る理由はライスシャワーの名の通り。
彼女は決してヒールじゃない。
ヒーローだ。
◼擬人化という究極の美化
競走馬の擬人化が善い悪いという話をここでするつもりはない。
しかしライスシャワーが20年近い時を経て擬人化される、ここに意味がある。
ウマ娘に触れるまで競馬──ましてや過去の名馬など、微塵も知らなかった方は少なくないはずだ。
かく言う筆者も競馬の「け」の字も知らない人間で、【ウマ娘プリティーダービー】プレイ前まではせいぜい所持していた知識なんて、かなり昔に見たアニメ『みどりのマキバオー』のおぼろげな記憶程度。
オグリキャップって名前は聞いたことあったかな……?くらい。
↑こんなん。ウマ娘も競馬もよーわからん状態。比べてみるとあんまり似てなかった。
そんな筆者は当然、過去のライスシャワーの栄光も挫折も知る由もない。
だからきっと、触れるきっかけは“擬人化されたから”なのだ。
流行に乗りアプリをインストールし、トウカイテイオーというウマ娘に一目惚れしてゲームをプレイし始めた。
ウマ娘のアニメも未視聴であった筆者は世界観も設定も知らない。なのでともかく、沢山いる美少女キャラクターたちを育てることを楽しむことにした。ただの育成ゲームとして遊んでいたのだ。
後々気づいたのは、【ウマ娘】は「もしも」を楽しむゲームだということ。某氏のハルウララに関するnoteを一読し、馬になし得なかった夢をウマ娘に託せることこそが最大の魅力なのだと気づく。
「沢山いる美少女キャラクター」。
そのひとりに、彼女は居た。
ライスちゃん。弱々しい声でプレイヤーを「お兄様」と呼び慕い、どこかオドオドとした雰囲気の少女。
個人の意見で申し訳ないが、彼女は筆者の好みではなかった。快活なテイオーとは真逆でどこか頼りなく、もっさりとした見た目からは薄ら地雷臭に似たものも感じた。
普通にしていれば決して、「推す」には至らないキャラクター。当初は殆ど全くと言ってよいほど、彼女に対する好意を抱くことは無かった。
事実、育成ゲームにも関わらず彼女をきちんと育成しはじめたのは入手後日が経ってからのこと。
3冠入手、そして有マ記念にて皇帝シンボリルドルフを破るという、トーカイテイオー(馬)が「なし得なかった」どころかあり得なかった夢をトーカイテイオー(ウマ娘)が実現させ、やっと手が空いたから取り敢えず育てるか……程度のノリで手を出した。
◎育成ストーリー
みんなを不幸にする悪い子、と彼女は自称した。
所謂「不幸キャラ」で、しかもそれがゲームのシステムにまで反映されている。
すまん、初見でライスをURAグランプリ優勝させられたやつおる?そう聞きたくなるくらい、とても育成が難しい。
当然だ、無敗の「栗毛の超特急」ミホノブルボンに初黒星を叩きつけるような娘が、そんな簡単に強くなれる訳がない。
かく言う筆者も天皇賞(春)に出走するありえないほど強いマックイーンにライスともどもボコボコにされ、育成打ち止めになるばかりだった。
「がんばれライス、がんばれ……!」
「がんばるぞー、おーっ!」
自身を鼓舞するかのように「がんばる」と口にするライスシャワー。
それはきっと「見る者を幸せにしたい」から。「勝ちたい」から。心根の優しい部分も垣間見え、彼女の人柄の良さが次々と表立つ。
それらを知って初めて、筆者は少しずつライスシャワーというウマ娘に心を打たれ始める。オタクは健気な女の子に弱い。
しかし……やはり天皇賞(春)が鬼門。勝てない。育成が進まない。モチベーションが下がる。
モチベーションが下がりすぎた結果──逃げた。
育成を中断した。
なお筆者はこのときまだ、史実のライスシャワーのことなど微塵も知らない。
◎メインストーリー
ライスのことなど忘れて、タイキシャトルやダイワスカーレットの大きなおっぱいがぶるんぶるん揺れるのを眺めていたある日、ゲーム内にメインストーリーというものがあることに気づく。
第1章は天皇賞2連覇を狙うメジロマックイーンを主人公とした、青春スポ根ストーリーが展開される。
チーム解散の危機、チームメンバー不足、奔走するマックイーン、そんな彼女に惹かれて集まってくる仲間。友情、努力、挫折、復活、勝利。ドラマチックなストーリー展開を見せる。
何だかんだ紆余曲折を経て、マックイーンは史実通り天皇賞(春)を2連覇するのだった。
そう。大まかな流れこそ史実通りにメインストーリーは進む。
誰々が強くて、誰々が何のレースで勝つのか。史実通りに事は運ばれる。結末は既に決まっている。ドラマチックな、なんて表現をしたが。
再現に過ぎない。
結局歴史をなぞり、再現し、擬人化した上で美化しているだけなのだ。
……しかし、競馬の「け」の字も知らない筆者はそんな事分かるはずもない。ただワクワクする「物語」として、メインストーリーを読み進める。
続く第2章。マックイーンは天皇賞(春)3連覇を目指しトレーニングの日々。そのタイミングで彼女がやってくる。
「刺客」、ライスシャワー。
逃げた筆者を追って来るように現れた。
「ライス、がんばる」
“また”その言葉を口にしながら。
なかなかレースで勝てない中、マックイーンの走りに憧れたというライス。
「勝ちたい」という強い意志を持つ彼女は、次第にマックイーンにも引けを取らない見事なステイヤーとしての才覚を見せる。
メインストーリー第2章、その主人公は誰でもない、ライスシャワーだった。
レースに勝つため、彼女は必死に努力を続ける。
【ウマ娘】をプレイしたことがあるなら分かるはずだ、1つのレースを達成するまでに、彼女たちはどれだけ沢山のトレーニングを積むか。
努力。努力。
努力に努力を重ね、ライスは実力を磨いていく。マックイーンに脅威と思わせるほどに。
そんな中、ライスに打倒すべきライバルが現れる。
無敗で3冠に挑む彼女に勝つという目標を立て、ライスは「がんばる」。ブルボンに「勝ちたい」という気持ちを原動力に。
その過程が丁寧に、多少ズレてはいるものの一生懸命なライスの努力とともに綴られる。
ここで虜になるのだ。
一生懸命で、みんなの幸せを願い、しっかりとした強い芯も持つ、とても良い子。
小さながんばり屋。ライスはまさに章タイトルの通りの女の子。そんな彼女に惹かれないトレーナーは居ない。
ここでウマ娘ライスシャワーは筆者の「推し」になった。本当の意味で、ライスの初期ファン数が1になった瞬間である。
そしてその時が来る。
菊花賞。クラシック3冠最後の1つ。
これまた史実通りに、ライスはミホノブルボンについていき、追いつき、追い越した。ライスがついに勝った。
──勝ってしまった──
「やったぁ!!!」
成長したライス。頑張ったライス。手放しで褒めてあげたいほどの見事な走り。圧倒的な勝利。画面の前で歓喜し、口走る。
史実を知らない、競馬も知らないからこそ、無垢に喜んでいた自分が居た。
そこから先は本当に地獄だった。
「なんつーか、ちょっと残念だな。」
誰かがそう口にする。
異様な空気。
そして気づく。
多くの人が望んだ。無敗の3冠ウマ娘の誕生を望んでいた。
【ウマ娘】世界ではレースに勝つことで、「ウイニングライブ」のセンターを取ることができる。
ファン数こそが物を言う近年のアイドルの「人気投票」とはそこが違う。
ウマ娘の場合ファンが居なくとも、強ければ、勝ちさえすればセンターに立てる。
──こんなのあんまりだ。
憤る。
たかがゲームの、メインストーリーなんていうおまけ要素で、筆者は心に荒波を立てた。
お前らにライスの何が分かる、あの子はがんばり屋で良い子なんだ。
まるでオタサーの姫に振り回される輩のような言葉が脳内を駆け巡る。
勝ったのに。誤魔化しのきかない一発勝負で、明確な実力差を示しライスシャワーはミホノブルボンを降したのに。
なのに、冷たい言葉が投げかけられる。
ライスは良い子だ。芯も強い。
だが──耐え切れなかった。
みんなを不幸にする悪い子。
彼女は自身に、その烙印を押してしまう。
ライスは自分が勝つことは誰かを不幸にすることだと考えるようになる。
ミホノブルボンの勝利を望んだ多くの観客を不幸にしてしまった、他のレースでも勝てば同じことが起きる、と。
擬人化されたからこそ、感情を持ち、我々と同じ言語を操るからこそ彼女は苦しむ。
史実通りのシナリオに、ウマ娘であるライスの「勝ちたい」という意志が、心が、折れてしまった。
これは究極の美化。
擬人化したことで「感情」というものを上乗せし、美談をより美談として仕上げてきた。
こうして、名馬ライスシャワーの物語は変容していく。
◼永遠に解けない、奇跡の魔法
物語は続く。
◎メインストーリー
「みんなを幸せにしたい」、それは貫徹される彼女の願い……否、もはや祈りに等しいものだ。
だからライスは勝てなくなった。「勝ちたい」と思えなくなった。みんなを不幸にするから。
そんなライスに対してメジロマックイーンは「期待」する。同じ舞台で戦い、見せたい景色があるのだと。
天皇賞(春)、彼女の3連覇がかかった大舞台で、ライスとの真剣勝負を所望するのだ。
蘇る菊花賞の記憶。マックイーンの勝利を阻めば、ブーイングは避けられない。
尻込みし迷走する彼女の元に、かつてのライバル、ミホノブルボンがやって来る。
「勝負をしてください」
ブルボンはライスにそう持ちかける。
追う側と追われる側は逆転していた。
「勝ちたい」という気持ち。そのための努力。それこそがライスの武器であることは、ライバルであるブルボンも、彼女の頑張りを直ぐ近くで見てきた我々も知るところだ。
ライスも思い出す。これまでの努力、「勝ちたい」という強い意志。
「ライスが勝つことを喜んでくれない人がいても、それでもやっぱりライスは……。」
ウマ娘という擬人化だからこそ、この脚色は許されるし、これほどまでに美しい。
「ライスは、勝ちたいっ!」
ライスは天皇賞(春)への出場を決め、マックイーンとの勝負に挑む。
メインストーリーの大枠は史実通りに進むことはすでに述べた通り。冒頭でも見たように、このレースではライスがマックイーンに勝利。センターを掴むこととなる。
当然ブーイングの声は上がる。ライスもプレイヤーも、そのことは分かっているが……やはり辛い。
だが、その中にポツリ、ポツリと聞こえるものがあった。
ライスシャワーへの声援だ。
緑色に染まる中、ちらほら見える青いライト。きっとそれが、青い薔薇を身につけた彼女を応援してくれたファンの光。
自分の勝利が確かに、誰かを幸せにしていた。
そのことを知ったライスは──「勝者に相応しい姿」で、センターに立つ。
たがこれで終わらない。
繰り返しになるが、メインストーリーは史実通り。
ライスシャワー(馬)には長い長いスランプ期間があった。
彼女もそれをなぞる。Cygamesはなかなかハッピーエンドを見せてくれない。プリコネでもそうだ。すぐ女の子をひどい目にあわせるんだ。
ともかく、天皇賞以降ライスは勝てないレースが続く。
レースに「勝ちたい」という意志もある。努力も怠らない。なのに勝てない。1着が取れない。ブルボン、マックイーンの偉業を阻止した「あの時のライスシャワーはどこに行ってしまったのか」と実況からも煽り倒される始末。
レース後、勝ちを逃したライスが涙をぐっとこらえる。
……泣くときは嬉し泣きの方がいい。そう言って。
どうしたら勝たせてあげられるのか。
その答えは──。
◎育成ストーリー
勝てない。
勝てない状況が続いているのはこちらも同じだった。
メインストーリー第2章の続きを読むには、なかなかキワモノ揃いの長距離レースに勝利する必要がある。
メジロマックイーンに勝てないライスでは当然ながら勝てない。
奇跡的に、プレイ時の状況とストーリーの展開がダブっていた。
「がんばる」
メインストーリーのライスの姿が焼き付いて離れない。小さながんばり屋のあの子を、なんとしても勝たせたい。
そこで思い出した。【ウマ娘】は「もしも」を楽しむゲームだということを。馬になし得なかった夢をウマ娘に託せることこそが最大の魅力なのだと。
実際、筆者はトーカイテイオーの育成に際し本物のトーカイテイオーに関する情報を収集した。得意な馬場、出走すべきレース、脚質、そして多くの故障と奇跡の復活、その生き様や騎手たちの言葉などなど………そこまでしたからこそ、皇帝を超える帝王を生み出せた。
ならばやることは一つ。
───そうしてやっと、筆者は「ライスシャワー」を知ることとなる。
日本の競走馬である。
ミホノブルボンを負かし、メジロマックイーンの連覇を阻んだステイヤー。レース中の死という悲しい結末。
脚色もない、美化もされていない、本物のライスシャワーのドラマが真正面から迫る。少しネットで調べれば山ほど出てくる。レースの様子だって残っている。その最後すら。
自然と涙が溢れるほどの熱量を持って、名馬ライスシャワーは筆者の眼前を駆け抜けていった。
頑張らなくてはいけないのは、こちらの方だ。
一念発起、丸一日を費やして最強のライスシャワーを育成した。
──まず皐月賞を取った。
史実のライスは中距離レースの実績がなく種馬としても評価がつきにくかったという。ならば……最強のライスシャワー、いいや本当のライスシャワーなら、中距離でもきっと十分活躍できたと知らしめなければならない。
──続いて日本ダービーで1着。
3冠。そして春秋2冠。ゲーム内設定でも何でもない、トレーナーである筆者とライスシャワー、ふたりの目標がそれとなった。
有無を言わさない圧倒的な強さで持って、ライスシャワーの勝利で多くのファンを幸せにするのだ。そうすれば、きっと報われる。
──菊花賞。もはや敵は居なかった。
もちろん3冠など取らなくとも育成は続けられる。
だがそれでは駄目なのだ。もう「残念だった」などとは言わせない。言わせたくない。
がんばれライス。
──天皇賞(春)。マックイーンはついてこれない。
史実を超えた。
ライスシャワーは生きている。
今ここに、生きているんだ。
次。
次の目標レースは。
──宝塚記念で1着。
ストーリー内では突如として事故が発生、会場が阪神競馬場から京都競馬場に移されることとなる。
そこで筆者は震えた。
……………おかしい。
おかしい。なぜ宝塚記念に。
「これは、2年後のはずなのに」
宝塚記念。ライスシャワーにとってそのレースは──阪神淡路大震災の影響により急遽京都競馬場にて行われたそのレースは──史実でスランプから復帰し天皇賞(春)を2連覇した彼が、最後に出走し、頑張りすぎたゆえに命を散らした戦いである。
会場変更。共通点はそこだけだが、余りにも似ていた。
早すぎる。そうは思う。
だが、納得はできる。
これはゲーム。【ウマ娘プリティーダービー】。この宝塚記念は……ファンサービスなのだ。
有馬記念同様、宝塚記念はファンからの投票がなければ出走できない。
スランプ期間からの脱出、華々しい復活をまだ経ていない彼女を史実通りに再現して育てても、そんなファン数は獲得できない。
【ウマ娘】運営は知っていたのだろう。
だからこんな目標が設定される。
ここまで来れるライスなら、既に史実を超えているんだぞ、再現ではないんだぞ。
そう言われている気がした。
青い薔薇の花言葉は『奇跡』。
自然界に青い薔薇は存在しない。その奇跡は人の手により作られたものだ。
彼女も。今この手の中にある、究極に美化された奇跡も。
──宝塚記念、ライスは1着をもぎ取った。
多くのファンの声援を向け。育成ストーリー上最大の舞台、有マ記念に駒を進める。
「あなたの夢、わたしの夢は叶うのか」
実況の言葉がこれほどまでに染みることなど二度とないだろう。
ゲートが開く。
ライスシャワーは、夢の舞台に駆け出した。
ライスの物語は、まだまだ続く。
◎メインストーリー
(がんばれ。ライス、がんばれ……!)
勝利を願ってくれるのは、ひとりだけ。
自分だけだと、少女は思い込んでいました。
時は過ぎ、天皇賞(春)。
連覇のかかった大一番、彼女は──他の追随を許さない走りで盾の栄光を手にした。
──ライス、ライス、ライス、ライス……!
ライスが勝てなくなった原因。それは目標……追いかけるべき背中を見つけられなかったからだった。
仲間とライバルたちの助けもあり、スランプを抜け出すライス。
二度目の栄冠。
けれど全力で走りぬいた少女を迎えたのは、
まるで高い高い青空から舞い落ちるような、
たくさんのたくさんの声援でした。
これは彼女の強さをありありと証明する。
それだけじゃない。負け続きでも走り続けた彼女には今では多くの、本当に多くのファンにも恵まれた。
「あ……あの、ええと」
少女は驚いて、戸惑って……それでも。
小さな、少女には大きな一歩を踏み出して。
彼女が勝利したことで、多くの『幸せ』が生まれたのだ。
「あ……ありがとう、ございます……っ!」
──「『幸せ』が舞う時」
ストーリーの視聴後に手に入るサポートカード。
ターフの上に立つライスの顔は見えない。
ただ、小さながんばり屋の背中は、これまでよりも少したくましく見える。
少女への声援は、いつまでもいつまでも
止むことはありませんでした──
幸せを願い名付けられたその名は、今このとき、多くの人々の「幸せ」に寄与している。
擬人化され、美化されたライスシャワーを知ったことで、筆者は本物の「ライスシャワー」の生涯を知った。感動したなどという生易しい言葉では到底形容できない。『凄まじい追体験』でもしたような気分だ。
それはきっとライスシャワーだから、なのだろう。
忘れられない。
ライスシャワーはきっと、今でも多くのファンの胸の中に生き続けている。
筆者はそんな魔法を、ウマ娘、ライスシャワーからかけてもらったのだ。
◼ささやかな祈り
二度目の天皇賞(春)制覇後。
ライスシャワーの独唱ライブにて歌われる楽曲が、「さやかな祈り」。
走り始めたのなら──儚くも強い意志が込められた楽曲。
秘めた想いを胸に、夜空に浮かぶ月へと祈る。
「もう泣かない」
その瞬間、彼女の頬を伝った涙を見逃さない。
そして最後──ライスシャワーは、きっとあなたに『幸せ』を与える一言で、そのライブを締めくくる。
ではまた。
れもん